3-3. 原核生物の転写制御
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転写は遺伝子ごとにその効率がゼロから最大値の範囲で制御される
制御は主に転写開始の段階で行われる
制御にはDNA上の転写制御配列と、そこに結合する制御タンパク質がかかわる
1) ポリシストロニック転写とオペロン
ポリシストロニック転写
原核生物の転写で、複数の遺伝子が1つのプロモーターでまとめて転写される機構
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オペロン
プロモーターとプロモーター近傍の制御配列、その下流にある制御される複数の遺伝子の単位
ラクトースオペロン、アラビノースオペロン、トリプトファンオペロンなどがよく知られている
オペレーター
DNA結合性の負の制御因子が結合するDNA部位
誘導性あるいは抑制性のオペロンがあり、オペロンを誘導的に転写させたり、抑制したりする物質が、転写量をダイナミックに変動させる
レギュロン
特定の要因で発現が誘されるオペロンの一群
2) ラクトースオペロンの構造と制御機構
ラクトースオペロン(lacオペロン)
ラクトース(乳糖)の利用に働くオペロン
上流から3つの遺伝子
lacZ
ラクトースをグルコースとガラクトースに加水分解するβ-ガラクトシダーゼをコード
lacY
ラクトースを取り込むガラクトシドパーミアーゼをコード
lacA
ガラクトシドアセチルトランスフェラーゼをコード
ラクトースに必須ではないが、副産物としてつくられる異常ガラクトシドの解毒に働く
プロモーターの直下には抑制因子であるLacリプレッサー(lacI遺伝子からつくられる)が結合するオペレーターがある
ラクトースがないとLacリプレッサーがRNAポリメラーゼの機能を阻害するので転写が起こらない
しかしラクトースがあると細胞内に取り込まれて構造が修飾され、それがLacリプレッサーに結合してそのDNA統合能を奪うので、プロモーターが開放されて転写が起こる
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lacオペロン調節系は遺伝子組換え実験において、遺伝子導入細菌などを選択する実験の原理に応用されている
memo: lacオペロンのグルコース効果
グルコース効果, カタボライト抑制
lacオペロンが誘導されている細胞培養液にグルコースを加えるとラクトースが利用されなくなり、グルコースが優先的に利用される
グルコースはサイクリックAMP(cAMP)濃度を下げるが、cAMPは転写活性化因子のCAP(cAMP-activated protein, CRP: C-reactive proteinともいう)に結合して転写を活性化させる
オペロンには上流にCAP結合部位があるためCAPで活性化されているが、グルコースがあるとcAMPが低下し、オペロンの発現が下がる
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3) 遺伝子工学で汎用される大腸菌の転写制御因子
転写抑制因子としては上述のLacリプレッサーのほか、トリプトファンオペロンのTrpリプレッサー、組換え因子recA遺伝子などの抑制因子であるLexA、λファージのλリプレッサーなどがある
転写活性化因子として使われるのは、主に上記のCAP